一通の懺悔
【 半月後 】
 茶色の煉瓦が敷き詰められたその道を、セントゥールは足早に歩いていました。道は、ほぼ真っすぐに、西へと向かって伸びています。向かう先の空には、傾きかけた秋の日を追いかけるように、弧を描く、細い月が見えました。一月前にこの町で見たものと同じ、うっすらと白い三日月でした。
 広いわりに道にはひと気がなく、代わりに、どこか孤独を感じさせる静寂がありました。道の両端では、枯れた色の草がざわざわと鳴いています。その草を縫うように、胸の高さほどの細い木の板が、ほぼこぶし一つぶんの距離を置いて等間隔に、黒く塗られて立っていました。その柵は道と並行して、かなり遠くまで続いているようでした。
 やがてセントゥールは、その柵の途中に、広い敷地内へと入るための柵状の門を見つけました。蝶番の軋む片戸を押し開けて、迫持ちをくぐります。柵の内側には、いくつかの煉瓦の道と、たくさんの『家』がありました。
 整然としたその光景を、セントゥールは立ち止まって見回しました。それから、先ほど教えられたとおりの道を、ゆっくりと歩き出しました。あたりに並んだ小さな家の群れは、ひっそりと黙りこんだまま、地面に影を落としていました。この広い場所で、動くものは風に揺れる草木だけで、人の姿はまったく見当たりません。ざわざわと続く音に紛れて、どこか遠くで、鳥の声が響いていました。
 道の端に目印の石碑を見つけると、セントゥールはそこで道を外れて、枯れた草の上を歩き始めました。目に映るのは同じような景色ばかりで、目印がなければ、自分の居場所さえも見失ってしまいそうです。
 歩を進めながら、セントゥールは、彼のことを思い出していました。彼が最後に自分に告げた、その言葉の意味を考えていました。それにどんな意味があったのか、その答えを見つけられないままで――静かに、足を止めました。
 そこに、彼の新しい家がありました。
 小さな、石の家でした。細かな白と黒が混ざり合った灰色で、丸い形をしていました。セントゥールに向かっている側にだけ、平らにされた面があって、彼の名前と生年月日、そして、七日前の日付けが刻まれていました。
 その家の中で、彼は静かに、眠っていました。
 眠ることしか、できないのでした。
 思うことも、考えることも、愛することも忘れて、彼はまるで、家と同化してしまったかのようでした。今やこの家こそが、彼であり、彼のすべてでした。
 セントゥールは、少しだけ、悲しそうに微笑みました。
 『彼』はもう、彼ではなくなっていました。
END.