純白の香り
[ 6 ]   あの日から三年後の手紙
『 ユリをくださった方へ


 この手紙を、今年もあなたがいらしてくれて、
 手に取ってくださることを祈ります。

 一年前のお手紙では、あたたかなお言葉を
 ありがとうございました。
 つらく苦しい日々が続きましたが、
 この思いもどうやら報われるときが来たようです。

 本当にこれでいいのかどうか、
 迷いがなかったと言えば嘘になります。
 自ら進んで、あの男と同じように手を汚そうというのですから。

 けれど、私の底に潜む暗い衝動は、
 どうしてもうずいてやまなかったのです。
 この想いを果たすためなら、私はどんな醜い存在にでもなるでしょう。
 憎んでも憎み足りないあの男と、
 同じ場所まで堕ちることさえ厭わないでしょう。
 もしかしたらあの男と同じように、私にも天罰が下るかもしれません。
 けれどそれでも、私はあの男を、あの男の潜む血を、
 決して許せはしないのです。

 もしも私に罰が与えられるようなことがあれば、そのときは
 いつかの言葉通りに、後のことをお頼みしたいと思います。
 妹には、私の他には、参る者もありません。
 もちろん、できるかぎりで構いません。どうぞよろしくお願いします。

 長い、長すぎる時間が流れましたが、
 明日の命日に、ようやくすべてを終わらせることができそうです。
 悲しみはこれからもなお続いていくでしょうが、
 すべてが終われば、妹の仇を討つことができれば、
 新しい気持ちで歩きだせるだろうと信じています。

 それではどうか、
 あなたのお心も、いつか癒されますように。
アシェル=ラングリース 』